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時潮

時潮
申年に思う

副理事長武本 康夫
今年は申年・・・申年は何かと騒がしい年になると言われているそうです。
確かに世界に目を向ければ、中東ではサウジアラビアとイランの国交断絶、朝鮮半島では北朝鮮の水爆実験(本当に水爆かどうか確認されていませんが、核実験は間違いないようです)が世界からの批判を無視して行われました。経済に目を向ければ。原油価格の下落に加えて、中国経済成長の鈍化により世界経済の先行きに不安があります。

日本国内では円安が進み、株式市場では外人投資家(主に産油国と言われています)の株式市場からの資金の引き上げによる年初からの株価の下落が止まりません。インフレが進まず、安倍首相の経済政策が有効に機能していません。この原稿を書いている最中に、沖縄の宜野湾市長選挙で現職の佐喜真淳氏が、基地反対派が推す志村信一郎氏を大差で破り当選しました。選挙結果に驚きを隠せませんが、この夏の参議院選挙がどのような結果になるのか、まったく読めません。

甘利経済再生担当大臣の政治資金規制法に抵触しているおそれのあるスキャンダルが発覚しました。この大事な時期に国会の審議がこの件でストップすることは国民にとって多大な損失です。甘利大臣は速やかに事実関係を明らかにして、この問題を解決しなければなりません。

2016年が始まってまだ1月も経っていないのにこれだけの事が起っています。
私が一番気になることは、最近あまり騒がれなくなりましたが憲法改正議論です。もしこの夏の参議院選挙で与党が勝てば憲法改正が一気に進むことになりかでしょう。憲法改正の議論ですが、制定されて70年近く経ち、その間改正されず今日に至っています。

私は現在の平和憲法の根幹を変える必要性はないと思っていますが、やはり時代の変化に合わせて変えていく必要はあると思っています。国民は、憲法は民法や刑法のように国民が守らなければならない法律だと思っている人が多いのではないでしょうか。憲法は主権者である国民が政府を管理するための法律であり、従って非常に重要であることの認識が薄いのではないでしょうか。声高に憲法改正を叫んでいる安倍自民党ではありますが、憲法9条のあたりのことばかりになっているようで他の部分について何も聞こえてきません。ここに9条の全文を記載します。

「第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

軍備は持てないはずが、専守防衛のための軍備は容認され、日本の船舶の護衛のためなら遠くホルムズ海峡まで行き、果ては機雷の掃海作業も行う。法の解釈でそこまで出来るとなるとこの法律は何なんだろうと考えさせられます。

私達が日頃接している税法でも、そこまで解釈を変えて適用しようと考えたことはありません。そういう解釈ができるほど9条の規定はあいまいなのでしょうか。

現在の9条が有名無実化となっているのなら、正々堂々と議論し、より良いものに変えていけばよいのではないか、と考えています。しかし、安倍政権は憲法改正の手続きを定めた96条をまず改定しようとしました。96条の全文は下記の通りです。

「第九章 改正
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。」

この国会での「3分の2」を「2分の1」に改定しようとしました。これには憲法改正に前向きであった一部の大学の憲法学者も、大学の裏口入学のようなものだと批判しているようです。何故そのような手段を行使しなければ改正できない法律を、急いで改定しなければならないのでしょうか。安倍首相は、真のリーダーは時として重要なことを、批判を浴びても決断し実行しなければならないと言っています。その判断が正しかったと後に評価されるものであるとも言っています。安倍首相は何か勘違いされているような気がします。

議論を尽くしたが結論が分かれて、賛否が拮抗したときにその判断をくだすのが私は真のリーダーシップだと思っています。

憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を行使できる法案を成立させています。交通事故で突然家族を失った遺族は、その心の傷は一生癒えないと訴えています。もし自衛隊員が集団的自衛権行使のため他国での戦闘により命を失う結果となった場合、その遺族の気持ちを考えたことがあるのでしょうか。
憲法9条にあるように、武力による解決ではなく日本独自の解決方法を模索し、世界から何と言われようとも実行してもらいたいものです。その決断こそ真のリーダーだと思います。

この法案に賛成している安倍首相以下国会議員は、ヘルメットをかぶり銃弾飛び交う最前線を体験されては如何でしょうか。
私はこの申年が騒がしい年にならないことを願っています。

(たけもと・やすお:神戸会)

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