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判例研究会報告
コンビニ業界の正常な発展を目指して
- 野教授ら、規制法要綱を発表 -
東京会  関本  秀治  

規制緩和により大手スーパーが各地に出店し、既存の商店街を破壊してきたことは周知の事実です。この商店街の破壊に追い打ちをかけたのがコンビニエンスストアーの乱立です。何の規制も受けないコンビニは、大手スーパーの系列店として全国各地に店舗網をはりめぐらして、苦しい営業を続けてきた従来の小売店に決定的な打撃を与えています。

コンビニで最も大きな問題は、コンビニを経営しているオーナーが、本部との契約でがんじがらめに締めつけられて、法外なロイヤリティー(本部手数料)を吸い上げられるほか、24時間営業を強制されるなど、オーナーもそこで働く労働者も低賃金、長時間労働を強いられていることです。それでも、当初の本部の説明のように収益が上がればよいのですが、「働けど働けどわが暮し楽にならず」遂には自殺者や破産者さえ出すというのが現状です。

旧来の流通機構が規制緩和によってほとんど完全に破壊されてしまった現在、コンビニは地域社会にとっては一つのコミュニティーセンター的な役割を果たしているといえるのではないでしょうか。

そういう現状を前提とするならば、その業界の健全な発展と地域社会(従来の小売店を含めた)との調和をとるために、コンビニについて適正な規制を設けて、従来の小売店との共存を可能にし、かつ、コンビニのオーナーの生活や健康を守るとともに、そこで働く労働者の正当な権利を守ることが緊急に求められます。

コンビニ問題をめぐるいくつかの裁判に深く関与し、コンビニ業界の実態を知りつくされた北野弘久日大名誉教授が委員長となり、「フランチャイズ法研究会」が立ち上げられて、この度、「フランチャイズ規正法要綱」案が発表されました。この法律案要綱は、地域社会の発展と、コンビニチェーン店加盟のオーナー、そこで働く労働者の生存権を確保することを目的とした「最小限度の『社会立法』」(北野教授の表現)です。

この法律案要綱の内容が、北野教授自身によって法律の専門誌である「法律時報」10年3月号(82巻3号)に、「『フランチャイズ規制法要綱』の発表」と題して掲載されました。わずか2ページの小論文(別に要綱4ページ)ですが、関係者がおかれている環境や現状の問題点、それを解決するための処方箋が、簡潔かつ要領よくまとめられています。

筆者も、セブン・イレブン問題について、本誌や雑誌「経済」10年3月号(74号)などで紹介させていただいていますが、北野教授の研究会がまとめられた規制法要綱の内容については、ほぼ全面的に賛成です。チェーン店を経営するオーナーやそこで働く労働者の正当な権利を守り、コンビニが地域社会と協調して発展できるよう、この法制が1日も早く実現することを願っています。

(せきもと・ひではる)

フランチャイズ規制法要綱
2009年12月 フランチャイズ法研究会  

1 総則
1.1 目的
この法律は、フランチャイズ事業者の責務等を明らかにし、その事業の公正かつ適正な運営を確保するとともに、フランチャイズ事業者とその加盟者との間の情報の質及び量、交渉力並びに経済力の格差等にかんがみ、独立事業者である加盟者及びその従業員等の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障し、もって各地域社会及び社会全体の安定と健全な発展に資することを目的とする。
1.2 定義
1.2.1 フランチャイズ事業者
この法律において、フランチャイズ事業者とは、個人又は法人(以下「加盟者」という。)との契約(以下「フランチャイズ契約」という。)によって、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用する権利を与えるとともに、加盟者の行う事業について統一的な経営手法による指導又は援助を行い、加盟者からこれらに対する対価として反対給付を受け取る事業者をいう。
1.3 加盟者の範囲
この法律が適用される加盟者は、中小企業基本法第二条第一項に定める中小企業者に該当するものに限る。
2 フランチャイズ契約
(中略)
2.2.1.7 ロイヤルティに関する条項
フランチャイズ事業者は、フランチャイズ契約書に加盟者から徴収することを明示したもの以外には、名目のいかんを問わず、加盟者から金銭を徴収し、又は加盟者との取引において利益を得てはならない。

フランチャイズ事業者が加盟者から徴収する金銭(以下「ロイヤルティ」という。)は、フランチャイズ事業の指導の対価として合理的な根拠に基づき計算された適正な金額でなければならない。

フランチャイズ事業者の指導の対価として合理的な根拠に基づき計算された適正な金額を超えるロイヤルティを加盟者が支払うことを定めた条項は、その適正な金額を超える部分について無効とする。

ロイヤルティの賦課基準として売上総利益(総値入高その他名称のいかんを問わない。)を用いる場合には、加盟者の経営上通常生ずる商品廃棄損・商品棚卸し損(以下「商品廃棄損」という。)は、その全額を売上原価に組み込まなければならない。

加盟者の仕入れ取引に関して生ずる仕入れ値引・仕入れ報奨金(以下「仕入れ値引等」という。)のうちその発生に係る個別事情が開示されない部分については、売上原価から控除してはならない。

商品廃棄損等及びその発生に係る個別事情の開示されない仕入れ値引等の部分に対してロイヤルティを賦課する条項は、無効とする。
2.2.1.8. 売上金の送金に関する条項
フランチャイズ事業者が加盟者に対して、加盟者の売上金を一律に全額送金させて、フランチャイズ事業者が預託を受け、又は管理することを定める条項は、無効とする。
加盟者は、原則として取引先に対する債務を自己の責任で支払うものとする。

フランチャイズ事業者が加盟者の取引先に対する債務を支払代行する場合において、支払日の前七日よりも早くフランチャイズ事業者に送金しなければならないとする条項は、無効とする。

フランチャイズ事業者は、前項の支払代行をする場合には、加盟者から預かった金銭を自己の財産とは分離して善良なる管理者として保管し、又は保全しなければならず、他の用途に流用してはならない。

フランチャイズ事業者が加盟者から定期的に徴収するロイヤルティについて、その支払日よりも前に送金させることを義務付ける条項は、無効とする。ロイヤルティの送金手数料は、フランチャイズ事業者の負担とする。
2.2.1.9 加盟者の売価決定の自由
フランチャイズ事業者は加盟店に対して、個々の商品又は役務の販売価格の決定の自由を制約してはならない。
フランチャイズ事業者は、加盟者が商品又は役務の値下げ若しくは見切り販売をしたことを理由として、加盟者を不利益に取り扱ってはならない。
2.2.1.10 オープンアカウント制度を定める条項
フランチャイズ事業者が加盟店との間において、単なる事実上の金銭出納整理勘定に過ぎないものの借方及び貸方に法的意味を付与するオープンアカウント制度(以下他の名称のもので同趣旨の制度を含む。)を規定する条項は、無効とする。

前項の規定において、オープンアカウント制度とは、フランチャイズ事業者が加盟者との間の金銭出納整理のために設ける制度で、その勘定の借方をフランチャイズ事業者の加盟者への債権とし、貸方を加盟者のフランチャイズ事業者への債権とみなし、一定の期間内の借方と貸方の各総額を相殺し、加盟者に借方残高の支払義務を法的に負わせるものをいう。
フランチャイズ事業者が加盟者から借方残高に対して利息を徴収する条項は、無効とする。
2.3 フランチャイズ事業者の義務
(中略)
2.3.3 原価開示義務等
フランチャイズ事業者は、加盟者に対して原材料又は商品を販売する場合には、加盟者が他の者から商品を仕入れるか否かを決定する機会を与えるために、必要な情報を書面によって無償で加盟者に提供しなければならない。

フランチャイズ事業者は、加盟者に対して原材料又は商品を購入する先を推奨し、又は請負その他の役務を提供する先を推奨する場合には、加盟者が他の者との取引を行うか否かを決定する機会を与えるために必要なその他の情報を事前に無償で加盟者に提供しなければならない。

前二項の場合において、何人も加盟者に対して公正かつ妥当な価格を超える価格を対価として要求してはならない。
2.3.4 支払代行にかかる義務
(中略)
3 行政取締り
3.1 約款及び事前開示書面の届出
フランチャイズ事業者は、その名義のいかんを問わず、フランチャイズ契約の約款及び事前開示書面を公正取引委員会に届け出なければならない。
3.2 行政措置
3.2.1公正取引委員会による調査及び勧告
公正取引委員会は必要があると認めるときは、フランチャイズ事業者にその取引に関する報告をさせ、又はその職員にフランチャイズ事業者の事務所若しくは事業所に立入り、帳簿書類等その他の物件を検査させることができる。

公正取引委員会は、フランチャイズ事業者がこの法律に違反する行為をしたと認めるときは、必要な措置をとるべきことを勧告し、その内容を公表できる。
3.2.2 措置請求
何人も、この法律に違反する事実があると認めるときは、公正取引委員会にその事実を報告し、適当な措置を講ずることを求めることができる。

フランチャイズ事業者は、加盟者が前項の措置要求をしたことを理由に、当該加盟者を不利益に取り扱ってはならない。
4 加盟者の団体 (略)
5 紛争処理機関
5.1 紛争処理機関
公正取引委員会の下に、フランチャイズ事業者と加盟者との間の第三者紛争処理機関を置く。
5.2 紛争処理機関の権限
 紛争処理機関の決定に対しては、フランチャイズ事業者及び加盟者は誠実に従う義務を負う。
6 罰則 (略)

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