論文

【特集】消費税・税制改正検証
庶民増税でなく経済的能力に応じた税制へ
― 小泉税制改革を攻勢的に闘う3つのポイント ―
大阪会佐飛淳一

5.<第3のポイント>税金は経済的能力に応じた負担へ

税制は、どうあるべきか?この事も、マスコミは十分に語ろうとしません。
小泉内閣の税制改革は、「経済社会の活力が発揮される」税制づくりです。経済活動の中心を担う大企業・大金持ちには減税、庶民には増税です。すでに、零細な事業者への消費税課税、高齢者・年金への課税強化を行ってきました。今回、定率減税廃止をねらっています。
【住民税でも庶民増税】

今後出てくるのは、地方への税源移譲を名目とした個人住民税の定率化・フラット化です。個人住民税は、現行は5%、10%、13%の3段階の課税となっています。これを、10%の定率にするのです。13%の層には3000億円の減税、5%の層には3兆3000億円の増税、差引3兆円の増税を予定しています。(04年11月27日付朝日新聞)低所得者への増税です。
【サラリーマンへ増税攻勢】

06年にかけては、個人所得税の抜本的見直しも予定されています。各種所得控除の縮小・廃止と、給与所得控除の縮小です。

給与所得控除は、平均的サラリーマンの場合、給与収入の約30%です。給与収入から給与所得控除を差し引いて、税金の計算をします。給与の場合、収入の70%が税金の計算対象になるのです。それ故に、給与所得控除を縮小すれば、政府は税金をたくさん取れるのです。

給与所得控除は、元々、勤労控除としてスタートしました。勤労性の所得には、税金を軽くする考えです。それ以外に、毎月税金を源泉徴収されていること、収入が透明であること、労働者も経費がかかることを理由として、設けられています。

政府税制調査会は、4つの点のうち、労働者の経費の面だけをみて、経費がかかるとしても、せいぜい収入の10%程度と考えています。

政府税制調査会の資料では、給与所得控除は総額で66.8兆円です。(00年7月「わが国税制の現状と課題」)給与所得控除を半減し、10%の所得税を課税すると、66.8兆円×1/2×10%=3.34兆円の増税が可能です。(とりあえず住民税は5%とすると合計で5兆円の大増税です。)

政府は給与所得控除の縮小によって、労働者への大増税を考えているのです。
【庶民のくらしを直撃する消費税】

そして最後、07年に消費税の二桁税率への引き上げをねらっています。

消費税は1%アップで2.5兆円の増税です。5%から10%に引上げることで、12.5兆円の大増税です。消費税は、売り上げに上乗せして販売されます。消費者からみると、消費税分物価が上がるのです。消費税増税分、消費者の購買力は減ってしまいます。収入が同じならば、消費税分生活費を切りつめなければなりません。

森永卓郎氏の「年収300万円時代を生き抜く経済学」が、ベストセラーとなりましたが、小泉税制改革とは、労働者の年収が300万円でも、十分税収があがる体制づくりと言ってもよいでしょう。

しかし、こんな税制でよいのでしょうか?
【平和的生存権のための税制】

憲法は、9条、25条などで、平和の下で人間らしい生活を営む権利をうたっています。生活費に食い込む税金など論外と言えます。資本主義社会は、富の格差を生み出す社会です。失業・病気・事故・高齢化など、本人の力ではどうしようもない原因で、生活が崩壊します。生活の不安定化は、犯罪など社会不安の原因となります。人間らしく生活ができる社会づくりが必要です。多くの人々の、運動の中から、社会保障制度が築かれてきました。社会保障制度を支える税負担をどうするかは、大きな問題です。経済的能力に格差がある場合、税負担は、経済的能力に応じた負担とすべきです。
【応能負担と応益負担】

一般に、税金の負担には2つの方法があると言われています。応益負担と応能負担です。

「応益負担論」は、政府・公共団体からサービスを受けるのだから、益を受けることに対して、税金を負担すべきであると言う考えです。

「応益負担論」は、なぜ税金を負担しないといけないか?と言う根拠を示す理論です。しかし、受けた益に応じて、「いくら」「どれだけ」の税金を負担するかを示してはいません。道路を使用することで益を受ける、病院・消防署・学校があることで益をうける等々、と言っても、実際に一人一人がいくら税金を負担するかは、計算のしようがありません。

これに対して、「応能負担論」は、だれがどれだけ負担するのかを示す考えです。税負担の方法を示す理論と言えます。具体的には、税金は経済的能力に応じて負担するとの考えです。経済力のある大企業が、1円も負担していない消費税など論外です。
【応能負担こそ本来の租税原則】

応能負担の税制は、所得税・法人税などの直接税中心の税制です。間接税は直接税の補完的税制となります。一般的消費税は廃止して、贅沢品に対する個別消費税とする。様々な所得を別々に課するのではなく、総合して課税する総合課税とする。所得が多い人には税負担が増える累進制とする。最低の生活者には税金をかけない。働いて得た所得には税金を軽めとする。固定資産税などは、生活や生業的事業の土地・建物には、非課税・軽課税とする。これが、応能負担論の考えです。現在の税制を、応能負担原則にもとづく税制へ組み立て直す必要があります。

6.庶民増税反対の攻勢的な運動を!

現在のマスコミの多くが上記の3点についての議論が欠けています。税制をめぐる問題は、不公平な税制である租税特別措置法の問題など多々あります。もちろん税金の集め方だけでなく、税金の使い方も正していく必要があります。
【財源は十分にある!】

「不公平な税制をただす会」の04年度の「不公平税制是正による増収試算」では、国税で11.5兆円、地方税で10.5兆円、計22兆円の増収(消費税9%分)となります。これは、大企業・大金持ちにむりやり増税することではありません。不公平税制とは、大企業・大金持ちの本来負担すべき税金が、特別の理由をつけて減税されていることです。大企業・大金持ちに、特別に税金を優遇することはやめようという提案です。

公共事業についても、むだな公共事業の縮小・削減などで10兆円(消費税4%分)の財源が可能です。(03年10月8日発表の日本共産党の政策)

消費税を廃止して、応能負担原則に基づく税制改革を行う。むだな公共事業を始め、国・地方の財政を国民の視点で見直す。税金の使い方を正していく。そうすれば、庶民が安心して暮らしていける高齢化社会も可能ではないでしょうか。
【民主的な税制を求める運動が必要!】

庶民大増税の小泉税制改革に攻勢的に運動していくためにも、大いに議論し、宣伝していく必要があると考えます。国民主権とは、幸せな社会は国民が主人公となって自らつくりあげることであると思います。庶民大増税の小泉税制改革が実施されると、庶民のくらしや中小事業者の経営は、大打撃を受けます。庶民大増税反対の運動は、国民の生命とくらしを守る運動です。庶民大増税反対の攻勢的な運動を!
さびじゅんいち

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