論文

【特集】消費税・税制改正検証
庶民増税でなく経済的能力に応じた税制へ
― 小泉税制改革を攻勢的に闘う3つのポイント ―
大阪会佐飛淳一

1.定率減税廃止をねらう05年「税制改正」

05年度の「税制改正」について、国会で議論されています。昨年12月の「政府与党税制改正大綱」が、承認される見込みです。具体的には、個人の所得税・住民税の定率減税の「縮小・廃止」が中心となります。最高で、所得税で25万円、住民税で4万円の増税となります。一般のサラリーマン世帯では、平均58,000円の増税です。総額で3兆3000億円の増税です。
【「橋本内閣」の二の舞に?】

定率減税は、小渕内閣の時に制定されました。前任の橋本内閣が、消費税率アップをはじめ9兆円の負担増で、景気を失速させた事への対応策でした。

今回、この定率減税の「縮小・廃止」は、景気の上向き傾向を理由としてでてきました。確かに大企業の経営状態は良好です。上場企業の3社に1社は、実質無借金経営(日経1月23日付)との事です。しかし、多くの中小企業の経営はそうではありません。とても、景気回復状態とは言えません。これは、私たち税理士として顧問先の中小企業の社長さんと接している現場の実感でもあります。

「定率減税」は、給与所得者の場合は、06年1月分から1/2廃止、07年1月分から全廃となります。確定申告の場合は、07年3月の06年分申告から1/2廃止、08年3月の07年分申告で全廃となります。

総額3兆3000億円の負担増に、昨年の年金改悪による年金保険料の引き上げも加わり、「橋本内閣」の二の舞で景気の失速を招くとの声もあがっています。
【増税ラッシュの小泉税制改革】

ここ数年、私たち庶民への増税が続いています。03年度は、消費税の事業者免税点の引き下げ、配偶者特別控除の廃止、酒・たばこ税の引き上げがありました。04年度は、老年者控除の廃止、公的年金等控除の縮小です。中小零細事業者や、高齢者・年金生活者を直撃する増税です。そして、今回の定率減税廃止は、労働者を直撃するものです。昨年12月に「政府与党税制改正大綱」が出ると、テレビ・新聞などのマスコミは、そろって「増税で大変だ!」と報道しました。

2.税金についてマスコミが語らない3つのポイント

マスコミは、庶民の増税の大変さは報道しますが、残念ながら、この庶民増税に対して私たちが、何をしたらよいのかは伝えません。むしろ、増税の大変さに対して、国の借金(04年度で483兆円)の多さを引き合いに出して、「国も大変なんだから、国民も我慢しなさい」と言わんばかりです。結果として、国民にあきらめと、政治不信をあおる報道となっています。今回のマスコミの姿勢は、実質的に小泉庶民増税を側面から援助していると言ってよいでしょう。

現在のマスコミは、1 大企業・大金持ちへの大減税、2 大企業は消費税を1円も負担しない、3 応能負担原則がおろそかにされているという現行税制の最大とも言える問題点について、全く語っていません。

それでは、私たちは、小泉庶民増税に対して攻勢的に闘うためには、どうしたらよいのでしょうか?以下、マスコミが報道しない3つのポイントをみながら考えてみたいと思います。

3.<第1のポイント>大企業・大金持ちには、大減税が行われてきた!

大企業・大金持ちには、一貫して減税が行われてきましたが、このことをマスコミは、一言も語りません。
89年に消費税が導入されました。その時の政府の謳い文句は、「直間比率の是正」でした。所得税・法人税などの直接税中心の税制から、消費税などの間接税中心の税制へ転換すると言うものです。
【法人税の税率引き下げ】

消費税の導入と引き替えに、86年から89年にかけて、法人税率は42%から40%へ、所得税最高税率も70%から50%へ引き下げられました。

その後、法人税率は、90年37.5%、98年34.5%、そして99年に30%にまで引き下げられました。1000億円の利益があれば、420億円の法人税であったのが、今では300億円ですむのです。3割引です。

昨年の法人税収入は11.7兆円です。これは、42%の税率に引き戻すと、概算で11.7兆円×42%÷30%=16.4兆円で、4.7兆円の減税と言えます。
【所得税の税率引き下げ】

所得税の最高税率も、99年に37%に、引き下げられました。
課税所得1億円の場合、86年では5808万円の所得税が、99年では、3451万円の所得税となり、2357万円の減税と言えます。(マンションが1戸買える!)課税所得200万円の場合、所得税は86年で248,500円、99年で200,000円となり、48,500円の減税です。これに、プラス「定率減税」があります。20万円×20%=4万円が追加減税となり、合計で88,500円の減税です。(家族一泊旅行ができる?)

富山泰一税理士の試算では、課税所得2000万円以上の所得者は、人数で25万〜26万人。86年比で、毎年、2.3兆円〜2.4兆円の減税の恩恵を受けているのです。
【消費税増税と引き替えの減税】

この間の減税は、庶民にも少し恩恵はありましたが、大企業・大金持ちには、大盤振る舞いとも言える減税でした。それは、消費税創設増税との引き替えで行われた減税でもあります。こうしてみてみると、「せめて、税率を86年当時に戻す!」このこと抜きに税制を語るのはどう考えても片手落ちの議論と言えます。税率を86年当時に戻すだけで、法人税・所得税で約7兆円(消費税3%分に相当する)の税収となります。現在の大企業の経済力からすれば、十分負担能力があります。大減税を続ける理由は何も無いと考えます。大企業・大金持ちにも、応分の税負担をしてもらう。庶民増税の前に、この点を正すべきです。

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