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時潮

時潮
消費税増税対策でキャッシュレス推進というが・・
研究部長 疋田 英司
キャッシュレス決済の実際

最近はコンビニ利用の際はキャッシュレス決済を利用している。具体的にはカードリーダーにスマホをかざすFeliCa 決済、バーコードやQR コードを画面表示して店が読み取りする決済方法を使い分けている。これらを総じてスマホ決済とよぶ。

スマホ決済とは、スマホに登録された個人情報とレジ端末を経由した決済業者、クレジット業者、銀行などの登録情報とマッチングさせて決済する仕組みのこと。結果的には短期の貸金システムなので、業者間において決済手数料が交わされる。海外で利用すれば為替手数料も必要となる。

客は商品代金を登録されたクレジットカードや銀行口座から引き落としされるが、LinePayなどは登録された残高から引き去りされる仕組みだ。ポイント業者のポイント情報でも決済できるし、ポイントを蓄積することができる。

いずれもスマホをかざすだけで取引が完結するので便利なことこの上ない。
しかし、簡単にレジが終わるのかと思うと、簡単でない場合もある。セキュリティを高めるため本人確認が必要な場合はいくつかのプロセスを踏まなくてはならない。店「ポイントカードはおもちですか」

どこの店でもポイントを登録する意向確認をする。ポイント登録しなければ、すぐに決済できるのだが、後日ポイントで値引きされるなどのサービスがあることを知らされると、ポイントを利用しないと損した気持ちになる。また、ポイント登録せずに帰ると家族から「え!もったいない」と叱られる。ボーっと生きてるように思われるのもいやなので、スマホを操作してポイント登録画面を用意する。私「あ、はい。これで...」

私はポイントを読み取りするバーコード画面を表示して店員にスマホを示した。
店員はポイントの種類をレジに打ち込み、バーコードリーダーをスマホにかざす。レジは「ピ!」と登録完了の合図をならす。
その合図を確認した後、スマホを引き寄せ、決済用の画面に切り替える。

FeliCaを使う場合はwalletの画面にきりかえる。(そろそろついてこれない人もいるかもしれませんが...)店によっては特定のクレジットで決済するとポイントが3倍になるそうだ。それをしないと損した気分になるので利用するクレジットを選択する。FeliCa を利用するときには多少面倒な操作が生まれる。iPhone ]の顔認証システムだ。このシステムそのものは便利に使っている。特定の操作者以外には起動しないため、セキュリティ上、必要な機能だ。しかし、このシーンでは多少、手間に感じることがある。

前述のとおり、FeliCaの場合はスマホをカードリーダーの上に置かなければならない。そこから決済確認画面に切り替わるのだが、その際、顔認証しなくてはならない。当然ながら顔の前までスマホを持ってこなくてはならない。サングラスして買い物すれば認証されない。帽子をかぶっていてもだめな時がある。買い物するときはサングラスを外し、帽子を取らなくてはならない。

その後、スマホの右横のボタンをダブルクリックしなくてはならない。これで本人確認と意向確認が終了した。スマホを再度カードリーダーに戻し、「ピ!」と鳴れば決済が完了する。
操作はこういった手順だが、そうこうしている間に、後ろに人が並らぶ。手荷物があると作業が進まず、さらに焦りが深まる。

バーコード決済の場合はLINEPAYかPayPayを利用する。決済用のバーコード画面に変更し、レジ側はバーコードリーダーで読み取りをする。FeliCa は日本でしか通用しないシステムなので対応するスマホでないと利用できないが、バーコード決済やQRコード決済はどの機種でも利用できるので海外からの買い物客はこちらを使う。同様に海外で買い物する時もこちらでしか利用できない。

これらのシステムは登録するだけでポイント還元があり、消費者としては利用してみたくなる仕組みだ。小生もPayPayを登録すると無償で500円の還元をもらった。得した気分だ。使いたくなる気持ちもわかる。消費者心理を巧みに利用した仕組みでもある。

店側が必要なのは、キャッシュレス決済に対応するレジと通信環境。レジにはスマホ内のデータを読み取りするカードリーダーに加えてバーコードなどを読み取りするバーコードリーダーが必要となる。これらは初期費用だ。ランニングコストは通信費用と決済業者への加入料、代金決済手数料などだ。負担は売価の4〜6%と聞いている。現金決済が普通に行われている日本で、どこまで普及するのか。事業者の負担がネックではないか。
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消費税増税対策としてのポイント還元とは

政府は消費税の増税対策として、増税後の低迷を回避するため5%程度のポイント制度やプレミアム商品券を導入する。

このポイント還元はキャッシュレス決済の際に精算されるクレジット引落の際に還元するというもの。しかも中小企業が限定。大企業は対象外らしい。つまり、普段から利用している大手スーパーやコンビニは対象外になるといわれている。実際、コンビニは零細業者がフランチャイズ契約して運営していることも多く、見た目と実態はかけ離れている。

ポイント還元ができるためには、そのための登録費用が必要となる。さきほどの初期費用だ。さらにランニングコストがかかる。しかし、ポイント還元は9カ月だけの期限付き。
この9カ月のためだけに導入コストが払えるかどうかが問題。補助はあるとはいえ、顧問先に相談されれば、どのように説明すればよいであろうかと頭を抱える。

キャッシュレス決済はインバウンド対応のため経済産業省が強力に推し進めているといわれている。外国ではキャッシュレスが進んでいることから、日本で普及しないのが恥だと考えているらしい。実際、中国などでは店頭でアリペイなどが利用可能という表示はあってもクレジットカードの利用が可能という表示がかなり減ってきている。
外国からの買い物客はポイント還元はないが、キャッシュレス決済の環境整備に補助金を使うのが目的なのだろうか。

偽札を作ることが難しい日本の技術や、日本の教育が進んでいるからこそ現金決済が普及していると考えるが、経済産業省は遅れていると判断しているようだ。
なお、プレミアム商品券はマイナンバーカードへの登録により有利に使えるといわれている。ここでもマイナンバー普及という政府の思惑が見え隠れする。

キャッシュレス決済もマイナンバーも情報通信産業や金融界にとっては打出の小づちのような制度だ。当分のあいだ、この産業の成長は止まらないようだ。原発のように作れば永遠にコストがついて回る。それを食い物にされる国民はたまったものではない。

(ひきた・えいじ:大阪会)

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